伝統芸能花ざんまい~絲彩々~
■日時:2021年10月23日(土)13:00開場 14:00開演 15:10終演予定 ■場所:紀尾井小ホール 03-5276-4500
■番組:
黒髪 ・・・湖出市十郎作曲
唄/三絃 小野真由美 乱輪舌・・・三絃本手/生田検校作曲 三絃替手/山口巌検校作曲
三絃本手 小野真由美 三絃替手 菊央雄司
道成寺抄・・・新娘道成寺:藤本斗文作詞 石川勾当または菊岡検校作曲
新道成寺:作詞者不詳 二世杵屋長五郎・芳沢金七作曲
唄/三絃 小野真由美 胡弓/箏 高橋翆秋 囃子 福原百之助
■舞台監督 加藤繁治 ■進行 渡辺清弘 ■舞台 明治座
【演奏曲解説】
黒髪:もともとは『大商蛭小島(おおあきないひるがこじま)』という歌舞伎の”めりやす“–––作品の中で演奏される効果音楽–––として演奏されていました。
寺子屋に通う辰姫という娘は師である幸左衛門を恋慕っているのですが、それはかの源頼朝の仮の姿。その頼朝と政子が逢っているのをじっと耐え忍んでいるという凄艶な場面で唄われています。これが地唄に移され舞となると、芝居に関係なく、孤閨(一人寝)の淋しさ,恋のせつなさを描く内容となりました。
どうぞ、切ない恋に身を焦がす女性の姿を心に浮かべながら、あるいは或る日のご自分と重ね合わせながら演奏をお楽しみください。
(ちなみに「黒髪」は京都の舞妓さんが芸妓さんに襟替えする約二週間のみ、お座敷で舞われる曲でもあります)
乱輪舌:「みだれ」「みだれ輪舌」いろいろな呼ばれ方をするこの曲ですが、どう書いていても同じ曲です。
従来、この曲の三絃には替手がございませんが、今回は京都の山口巌検校が大正時代の終わりごろに作曲し、検校様の愛弟子であられた山口琴栄先生が校閲なさって公刊された楽譜より、三絃本手替手でお送りします。滅多に演奏されることがございませんので、今回が最後になるかもしれません。九州系の小野に対して、菊央先生は関西系。 あえて別タイプの奏法でセッションさせていただきます。
また、小野が当日使用する三絃は「のべ棹」と呼ばれるものでございます。 三絃の多くは、通常「三つ折」と言いまして、本体が三つに分解できるようになっております。対して「のべ棹」は、途中に継ぎ目のない三絃のことで、珍しいものです。 つなぎ目がないため、音の鳴りがたいへん優れていると言われています。
二大流派の音色の違い、のべ棹の音の美しさ、お感じいただければ幸いでございます。
道成寺抄:二世杵屋長五郎作曲 「新道成寺」石川勾当作曲「新娘道成寺」についてご紹介いたします。
道成寺の安珍清姫のお話は、お能や歌舞伎でよく取り扱われる題材ですので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
紀州愛子(まなこ)の庄司の娘、清姫が、熊野詣の途中に毎年この家に宿泊する山伏の安珍に片思いをして、末は夫と思い染めるのですが、修行中の安珍は驚いて逃げ出してしまいます。悲しみと怒りに身悶えする清姫は、日高川を渡って逃げた安珍の後を、自らは大蛇になって追いかけ、道成寺の鐘の中に隠れた安珍を焼き殺してしまう清姫のお話でございます。
地唄ですけど、どこか地唄でないような、従来のワクを超えたパフォーマンスに挑戦させていただきます。